旧石器・縄文時代
高知県は全国的にみても旧石器時代の遺跡が少なく、最初に報告されたのは1965年の高間原(たかまがはら)古墳群(高知市)の調査で出土した細石刃核(さいせきじんかく)です。その後1980年頃までは3遺跡しか知られておらず、2017年現在では35遺跡を数えるようになりましたが、実際の発掘調査で確認されたのは9遺跡で、その他は表採によって石器が確認されています。主な遺跡は、楠山・池ノ上遺跡(宿毛市)、奥谷南遺跡(南国市)、ナシヶ森遺跡(大月町)、新改西谷(しんがいにしたに)遺跡(香美市)などで、遺跡の分布状況は県西部に多く、県東部では確認されていません。なかでも南国市にある奥谷南遺跡は、発掘調査によりナイフ形石器と細石刃が包含層から多数出土し、旧石器時代の層位的な状況を把握することのできる県内で最初の重要な遺跡となっています。旧石器時代の遺物はナイフ形石器、細石刃、角錐状石器(かくすいじょうせっき)、掻器(そうき)などがありますが、県内ではナイフ形石器が23遺跡で出土し、県西部の遺跡がそのほとんどを占めています。使用される石材は在地石材の頁岩(けつがん)が主で、瀬戸内技法の影響がみられます。県中央部では同じ在地石材でもチャートが主で、県西部との違いがみられます。
高知県は縄文時代前期〜中期の遺跡は少なく、松ノ木遺跡(本山町)・田村遺跡群(南国市)などで土器がわずかに出土し、竪穴建物跡は2軒が確認されているだけです。後期〜晩期は四万十川流域を中心に、吉野川流域、仁淀川、物部川の平野部で数多く確認され、遺跡が低地に広がっていくことから、水稲農耕への移行がみられます。主な遺跡は、不動ヶ岩屋洞窟遺跡(佐川町)、十川駄場崎(とおかわだばさき)遺跡(四万十町)、奥谷南遺跡(南国市)、刈谷我野遺跡(香美市)、飼古屋岩陰(かいごやいわかげ)遺跡(香美市)、木屋ヶ内遺跡(四万十町)、宿毛貝塚(宿毛市)、松ノ木遺跡(本山町)、田村遺跡群(南国市)、船戸遺跡(四万十市)、居徳(いとく)遺跡群(土佐市)などで、田村遺跡・船戸遺跡では九州とのつながりを示す土器が多数出土し、なかでも居徳遺跡群では縄文時代晩期の土偶(どぐう)や東北地方の漆を使う特徴と中国長江流域の影響を受けたと考えられる文様をあわせもつ木胎漆器(もくたいしっき)、木製の鍬(くわ)、東北地方の装飾性が強く黒漆に朱漆が重ね塗りされた大洞式土器(おおぼらしきどき)、争いごとがあった可能性が考えられる傷跡の残る人骨、動物の骨などが出土し、当時の生活や地域間の文化交流、自然環境を知ることのできる貴重な遺跡となっています。